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大阪地方裁判所 昭和57年(わ)300号 判決

裁判所書記官

上永一行

本店所在地

大阪市浪速区桜川一丁目五番二五号

有限会社十字屋

(右代表者代表取締役安川輝彦こと安熙)

本籍

韓国慶尚南道鎮海市豊湖洞一八七番地

住居

大阪市住吉区苅田二丁目九番三三号

医師

富永紳介こと

李銅熙

昭和七年一月二四日生

本籍

韓国慶尚南道鎮海市豊湖洞一八七番地

住居

大阪市西区南堀江一丁目一八番二七号 四ツ橋セントラルハイツ八〇一号

会社役員

富永明介こと

李明熙

昭和一九年一月一五日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官藤村輝子出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

一、被告人有限会社十字屋を罰金二、三〇〇万円に、被告人李銅熙を懲役一年二月に、被告人李明熙を懲役六月に、各処する。

一、被告人李銅熙に対し、この裁判確定の日から三年間、同李明熙に対し、この裁判確定の日から二年間、それぞれその刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人有限会社十字屋(以下「被告会社」という。)は、大阪市浪速区桜川一丁目五番二五号に本店を置き、医薬品の販売等を目的とする資本金一、〇〇〇万円の有限会社であり、被告人李銅熙は被告会社の実質経営者として同会社の業務全般を統括しており、被告人李明熙は、被告会社を主たる取引先として医薬品販売業を営むエルティー産業株式会社の代表取締役をしているものであるが、被告人李銅熙、同李明熙は共謀のうえ、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、公表計理上薬品の仕入れ価格を水増し計上し、よって得た資金を無記名償権等として留保するなどの方法により所得を秘匿したうえ、

第一  昭和五三年三月一三日から同年一一月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億二、九六二万六、四六五円(別紙(一)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五四年一月三一日、同区難波中三丁目一三番九号所在の所轄浪速税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が六、八九五万六、四六五円でこれに対する法人税額が二、六九四万四、二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額五、一二一万二、二〇〇円と右申告税額との差額二、四二六万八、〇〇〇円を免れ、

第二  昭和五三年一二月一日から同五四年一一月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が二億六、六一七万七、七〇三円(別紙(二)修正損益計算書参照)あったのにかかわらず、同五五年一月三一日、前記税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一億四、二四二万一四三円でこれに対する法人税額が五、三〇〇万円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により同会社の右事業年度における正規の法人税額一億二四七万五、四〇〇円と右申告税額との差額四、九四七万五、四〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部につき

一  被告人李銅熙、同李明熙の当公判廷における各供述

一  被告人李銅熙(七通)、同李明熙(八通)の検察官に対する各供述調書

一  収税官吏の被告人李銅熙(六通)、同李明熙(一一通)に対する各質問てん末書

一  安熙、大平漸(二通)、井上守晴、岡崎嘉夫、奥谷坦、上羽慶彦、銕力、富永武、馬場文人、北村重信、野崎正弘、水谷昇、堀埜富克の検察官に対する各供述調書

一  収税官吏の安熙、上羽慶彦、銕力(二通)、富永武、馬場文人、倉賀野務、高須正義(二通)、細川隆治、遠藤弘三、西野敏明、山田雄二に対する各質問てん末書

一  収税官吏作成の査察官調査書五通(収税官吏山野重夫各作成の昭和五五年一二月二日付け、同月九日付け、同福島清作成の同月五日付け及び同扇谷志朗作成のものを除く。)

一  馬場文人、細川隆治、山田雄二、川瀬良一各作成の確認書と題する書面

一  大阪法務局登記官作成の法人登記簿謄本

判示第一の事実につき

一  収税官吏作成の脱税額計算書(証拠等関係カード検察官請求分番号1)

一  会社作成の昭和五四年一月三一日付け法人税確定申告書謄本

判示第二の事実につき

一  李明熙作成の確認書と題する書面

一  収税官吏山野重夫各作成の昭和五五年一二月二日付け、同月九日付け、同福島清作成の同月五日付け及び同扇谷志朗作成の各査察官調査書

一  収税官吏作成の脱税額計算書(前同番号2)

一  被告会社作成の昭和五五年一月三一日付け法人税確定申告書謄本

(法令の適用)

被告人李銅熙、同李明熙の判示各所為は、いずれも行為時においては、刑法六〇条、昭和五六年法律第五四号脱税に係る罰則の整備等を図るための国税関係法律の一部を改正する法律による改正前の法人税法一五九条一項に、裁判時においては刑法六〇条、改正後の法人税法一五九条一項に該当するが、犯罪後の法令により刑の変更があったときにあたるから、刑法六条、一〇条により軽い行為時法の刑によることとし、所定刑中各懲役刑を選択し、以上は同法四五条前段の併合罪なので、同法四七条本文、一〇条によりいずれも犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人李銅熙を懲役一年二月に、被告人李明熙を懲役六月に、各処し、情状によりいずれも同法二五条一項により、被告人李銅熙に対しこの裁判確定の日から三年間、同李明熙に対し、この裁判確定の日から二年間、それぞれその刑の執行を猶予する。

被告人李銅熙の判示各所為は、いずれも被告会社の業務に関してなされたものであるから、被告会社については右昭和五六年法律第五四号による改正前の法人税法一六四条一項により判示各罪につき同じく改正前の法人税法一五九条一項の罰金刑に処せられるべきところ、情状により同条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四八条二項により合算した金額の範囲内で被告会社を罰金二、三〇〇万円に処することとする。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 金山薫)

別紙(一) 修正損益計算書

自 昭和53年3月13日

至 昭和53年11月30日

〈省略〉

別紙(二) 修正損益計算書

自 昭和53年12月1日

至 昭和54年11月30日

〈省略〉

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